平成30年度 飯田病院 病院指標

内科では入院患者平均年齢がやや高いために誤嚥性肺炎や心不全が原因疾患となる例が多くなっています。高齢者の心不全はその原因が弁膜症や冠動脈狭窄など積極的に治療ができる基礎疾患ではない心筋障害が原因であることが多いため（左室収縮障害や拡張障害など）、内服薬や狭心剤などによる保存的治療が主体となります。高齢であるがゆえにADL回復のためリハビリが必要となり、（可能な限り早期にリハビリ介入していますが）入院期間がやや長めになります。逆に冠動脈疾患が明らかな症状は外来で心臓CTなど前もって行い、適応のある症例には適切に肝動脈形成術を行い合併症も少なく早めに退院できています（適応を決めるFFRはCTで行い、心臓カテーテル検査時にも必要な症例には行っています）。

当院は南信で唯一、下肢静脈瘤血管内焼灼術の施設認定を受けている病院です。下肢静脈瘤は日本人の15歳以上の約43%に認められるという報告があります。南信の人口が17万人という事を勘案しても、かなりの罹患者がいるものと考えられ、2018年3月に当院で下肢静脈瘤血管内焼灼術を開始以後手術希望者は後を絶ちません。そのため、外科分野での入院患者数として上位になったものと考えられます。
鼠径ヘルニアもまた罹患率の高い疾患です。鼠径ヘルニアは小児から成人までどの年齢層でも罹患しうる疾患であり、治療法は手術が唯一であるため成人、小児ともに上位になったものと考えられます。また、特に小児症例に関しては、当院は南信で唯一小児外科専門医が常勤でいる施設であり、患者が集まってきている事も理由の一つと考えられます。
結腸がんは、消化器がんの中で日本人の罹患率が最上位の疾患です。そのため上位になったものと考えられます。平均在院日数が全国平均よりもやや長い事に関しては、国立がん研究センター中央病院の結腸癌手術患者の平均年齢が65歳前後であることからも、当院では比較的高齢な患者さんが多い事が原因と考えられます。
「直腸肛門の悪性腫瘍　手術なし」症例に関しては、化学療法導入目的であったり、イレウスであったり多岐に渡るため上位になったものと考えられます。

整形外科では、例年通り変形性膝・股関節症で入院される方が多くいらっしゃいます。変形性膝・股関節症は高齢者になるほど罹患率は高くなり、主な症状は膝の痛みと水がたまることです。進行すれば歩行時痛のため日常生活動作が大きく傷害されます。治療法は、まず保存療法で様子をみるのが基本とされており、保存療法で効果がみられない場合、手術的治療を考慮します。当院では基本的にクリニカルパスに沿って手術・リハビリテーションを行いますが、一人一人にきめ細かなオーダーメイドの治療を併せて行う環境が整っています。手術からリハビリまで一貫して当院で行うため、平均在院日数が全国平均より若干長くなっています。
大腿骨頚部骨折は患者さんのＡＤＬ（食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活上欠かせない基本的行動）低下や予後に影響をおよぼすことが多く、全身状態に問題なければできる限り早期に手術を行い、しっかりしたリハビリが必要となります。当院では大腿骨頚部・転子部骨折地域連携パスを導入しており、当院で手術治療を行い、回復期病院でリハビリを行うというそれぞれの専門性を活かした治療がされるようになっています。そのため転院率が高くなっています。
脊柱管狭窄は、脊柱管（背骨の中を通る脊髄からの神経の通り道）を構成する骨や靱帯の肥厚、椎間板の突出などで脊柱管が圧迫を受け狭くなる病気です。

眼科では主に白内障での入院です。白内障は、眼球の中にある水晶体というレンズが加齢とともに濁る一種の老化現象です。目薬である程度の進行は予防できますが、進行すると矯正視力が出にくくなり（度の合った眼鏡をかけてもよく見えなくなる）、根治的治療は手術しかありません。手術では濁った水晶体を取り出して、かわりに人工の眼内レンズを挿入します。

※症例が10件未満の場合は「－」とし、個人が特定されないようにしてあります。

アレルギー疾患は、上気道領域、下気道領域、皮膚領域に分かれておりますが、そのうち上気道のアレルギー疾患について専門的な治療をしています。鼻のアレルギーだけでも国民の4割で、この10年でおよそ10％増えており、最近の報告では5割を超えるとも言われています。特に小児の症例が増えているのが特徴です。
薬でも充分な効果のない鼻つまりや、慢性的な鼻つまりには手術が効果的です。日帰りで行うコブレーション手術と入院で行う内視鏡手術を行っています。
耳鼻咽喉科は比較的若年層の方が入院される特徴があります。

※症例が10件未満の場合は「－」とし、個人が特定されないようにしてあります。

泌尿器科では前立腺生検を目的とした入院が多くなっています。前立腺生検は前立腺に癌がないか判定するために行います。

※症例が10件未満の場合は「－」とし、個人が特定されないようにしてあります。

狭心症を疑う症例は外来で心臓CT、心筋シンチなどを行い、適応のある症例には冠動脈形成術を施行しています。適応を決めるFFTはCTで行い、心臓カテーテル検査時にも必要な症例には行っています。上肢の動脈からのアプローチが多く、合併症も少なく早めに退院できています。
四肢の動脈治療のほとんどは総腸骨以下、多くは下肢の動脈の形成術治療となっています。重症下肢虚血病変もあり、形成術後リハビリなどを行う必要なある症例もあります。
外来で処置や対応が必要な症例は当院独自のフットケア外来に引き継ぎフォローを行っています。

鼠径ヘルニア手術、下肢静脈瘤血管内焼灼術に関しては、上記の通りで上位になったものと考えられます。
当院では腹腔鏡での手術を積極的に取り入れており、胆嚢摘出に関してはほぼ全例、結腸がんも最近では8割以上が腹腔鏡で手術を行っております。腹腔鏡手術は創が小さいため、術後早期より離床が可能であり、胆嚢摘出で術後約4-5日、結腸がんで術後約2週間での退院が可能となっております。
当院では肺がん、消化器がん、乳がん患者に対する化学療法も積極的に行っており、レジメンによって植込型カテーテル設置を行っております。橈側皮静脈カットダウン法にて設置することを基本としております。7.69%の転院率は、がんセンターなど専門施設での加療を希望された患者さんによるものと考えられます。

人工関節置換術は股関節や膝関節の変形した関節を、人工関節に入れ替える手術です。関節の痛みの原因であるすり減った軟骨と傷んだ骨を取り除いて、金属やプラスチックでできた人工関節に置き換える手術で、痛みの大きな改善が期待できます。当院ではほぼ全例で体の傷や負担を最小限に抑える最小侵襲手術(MIS)を行っています。人工関節置換術を受けられる患者さんの平均年齢は74.08歳と、比較的高齢の方が手術を
受けられていることがわかります。 当院では年間約350件以上の人工関節置換術を施行しております。
人工骨頭挿入術とは、大腿骨頭壊死や大腿骨頚部骨折等、骨接合術で整復・固定が困難な場合や早期荷重が必要な場合に、大腿骨の骨頭を取り出し人工骨頭(金属製人工物) に入れ替える手術です。人工骨頭挿入術を受けることで、早期に歩行訓練を開始することが可能で入院期間も3週間から4週間ほどで退院することが可能です。
骨折観血的手術は、ギプス固定では治癒が難しい複雑な骨折や重度の骨折、関節周辺を骨折した場合に施す手術です。当院では主に大腿骨頚部骨折や大腿骨転子部骨折に対し施行しています。高齢者の方は骨粗鬆症の方が多く、転倒した際に骨折をしやすくなります。中でも特に頻度が高いものが大腿骨頚部骨折です。大腿骨頚部骨折は患者さんのＡＤＬ（食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活上欠かせない基本的行動）低下や予後に影響をおよぼすことが多く、全身状態に問題なければできる限り早期に手術を行い、しっかりしたリハビリが必要となります。そのため、急性期病院では手術治療を、回復期病院ではリハビリを行うというそれぞれの専門性を活かした治療がされるようになっています。
整形外科全般に比較的高齢の方が手術を受けられていることがわかります。

眼科ではクリニカルパスを使用し、原則2泊3日の水晶体再建術（白内障手術）を中心に行っています。
水晶体再建術は白内障で濁ってしまった眼のレンズ（水晶体）を取り除き、人工レンズ（眼内レンズ）を眼に挿入する手術です。
白内障以外にも網膜硝子体疾患や小児の斜視などの入院手術、翼状片・成人の斜視・眼瞼内反（逆さまつげ）の手術や、近年増加している加齢黄斑変性などの疾患の進行を予防する血管内皮増殖因子阻害薬の硝子体注射を日帰り手術で行っています。

経鼻腔的翼突管神経切除術はアレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎に対する手術治療で、後鼻神経とは蝶口蓋孔という鼻腔後方で鼻の外側から鼻腔内に入ってくる蝶口蓋動脈が通る部位において動脈と伴走する神経であり、この神経を切断することで下鼻甲介からの鼻汁分泌量の抑制、下鼻甲介の後方の知覚が鈍ることにより過剰なむずむず感やくしゃみの軽減などが期待できます。入院期間は1週間前後で比較的若年層の方の手術が多くなっています。
内視鏡下鼻・副鼻腔手術は副鼻腔炎に対する手術治療で、内視鏡を用いて一側すべての洞を開放し、換気ルートを確保することで慢性的な鼻漏、鼻閉などの改善が期待できます。入院期間は1週間前後です。
また、鼓室形成手術や鼓膜チューブ挿入術などの「みみ」の疾患も当院で手術からアフターケアまで対応しています。

※症例が10件未満の場合は「－」とし、個人が特定されないようにしてあります。

膀胱悪性腫瘍手術は膀胱腫瘍（膀胱がん）に対する手術治療です。尿道から内視鏡を膀胱内に入れて、膀胱にできた腫瘍を切除します。切除した腫瘍は病理検査で深達度とがんの悪性度の診断を行います。手術は3泊4日の入院で行います。

※症例が10件未満の場合は「－」とし、個人が特定されないようにしてあります。