臨床検査科
【業務内容】
飯田病院検査科は、一般、血液、生化学、微生物、免疫血清に関する検査を行う検体検査部門、輸血部門、生理部門の三部門があります。各部門、正確かつ精度の高い検査結果が提供できるよう各種認定資格を習得し検査業務の向上に努めています。また、外部精度管理・内部精度管理を行い検査結果の信頼性を確保しています。
通常業務以外にも院内の感染対策チーム会、栄養サポートチーム会、糖尿病療養士会などに参加し、患者さんの治療に貢献すべく各部署との連携体制を取っています。日々進歩する医療界に対応すべく、積極的に学会や院内外の研修会に参加すると共に、検査科内でも定期的に学習会を行い知識と技術の習得に努めています。
【基本方針】
1.検査の結果を正確かつ迅速に提供します
2.常に患者さんの立場に立ち、質の高い安心・安全な医療を提供します
3.高度な知識と技術を習得し、よき医療者となるために日々研鑚します
4.他の医療機関と密接に連携し、地域医療に貢献します
緊急臨床検査士 | 15名 |
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超音波検査士(消化器) | 3名 |
超音波検査士(循環器) | 3名 |
2級臨床検査士(微生物) | 1名 |
NST専門療法士 | 1名 |
血管診療技師 | 1名 |
2級臨床検査士(循環生理学) | 2名 |
JHRS専門士 | 1名 |
認定POCコーディネーター | 1名 |
心電図検定1級 | 1名 |
心電図検定2級 | 2名 |
【採血業務】
当院検査科では、外来患者さんの検査技師による採血を40年以上前より行っています。一般病棟の早朝採血も2007年4月よりはじめました。検査技師による採血は臨床検査の精度管理の出発点と考え血液の凝固、溶血、採血量の過不足など採血時のトラブルを防止することに留意しております。また、混み合っている場合は受付後採血までお待ち頂く場合がありますが、採血後は検査結果が少しでも速く出るよう努力しています。採血室では、患者取り違え等医療事故防止のため、患者さん自身に名前を言っていただくなど、お手数をお掛けしますがご協力お願いいたします。
検体検査部門
【一般検査】
一般検査は、主に尿・糞便を検査します。尿検査では、腎臓、膀胱の病気や、糖尿病などの疾患を見つけることが出来ます。糞便では下部消化管からの出血の有無を検査し、特に近年では大腸がんの早期発見のスクリーニング検査として用いられています。
他に脳炎や髄膜炎などの診断のための髄液検査、悪性腫瘍や炎症時の胸水・腹水検査、関節の炎症や痛風の診断のための関節液検査など体腔液の性状やそこに含まれている細胞を調べる穿刺液検査を行っています。
【血液検査】
血液は血液細胞(血球)と血漿から構成されます。血球には3系統の血球(赤血球、白血球、血小板)があります。赤血球は細胞内にヘモグロビンを含み、酸素を組織に運搬します。白血球は顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、リンパ球に分類され、感染防御に機能します。血小板は止血及び血液凝固に重要な役割を担っています。
この血球成分を検査するため自動血球計数装置を用いた血球数の計測や分類、光学顕微鏡を用いた形態観察は貧血や白血病など血液疾患の診断に欠かすことができない重要な検査です。また、血液凝固線溶活性は術前のスクリーニング、抗凝固剤のモニタリング、肝機能の指標として実施しています。
【生化学検査】
血液は全身のあらゆる組織を循環して細胞に栄養分を運ぶと同時に老廃物を処理しているため、その血液を検査することは全身の健康状態の指標となります。血液を遠心分離機にかけると、有形成分(赤血球、白血球、血小板など)と無形成分(血清)に分離することができます。生化学検査では血清中の成分を化学的な手法を用いて検査をします。肝臓機能、腎臓機能、血糖やコレステロール、いわゆる皆様がお考えの血液検査を行っている分野ですがその種類も多く、組み合わせることによって疾患部位の特定や病気の診断に役立てられます。
【免疫血清検査】
免疫血清検査では血清成分を用いて各種検査を行っています。主に肝炎の原因となるB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどの感染症検査や、がんの発見、再発、治療に役立つ腫瘍マーカーの測定を行っています。その他、内分泌ホルモンや心疾患関連検査も行っています。
また、インフルエンザ、マイコプラズマ、溶連菌の感染症検査を行っており、当院では検体採取の講習を修了した検査技師が検体採取を行っています。
【微生物検査】
肺炎や膀胱炎、食中毒や敗血症などの感染症の時、原因となる病原菌を見つけます。喀痰、尿、糞便や血液などの検体から細菌を増やし(培養)、原因菌を特定し(同定)、その菌に効く抗菌薬を調べ(薬剤感受性試験)、感染症の治療に役立てています。その他に、ノロウイルス検査、抗生物質が効かない耐性菌の検査、いまだに発生する結核菌の検査なども行っています。
また院内感染対策チーム(ICT)や抗菌薬適正使用支援チーム(AST)に参加し、院内における感染対策の徹底と耐性菌の伝播抑制および抗菌薬の適正使用のため、検査結果の迅速な報告と院内における検出菌について情報共有に努めています。
生理検査部門
生理検査は患者さんに直接触れて行う検査の総称です。
【12誘導心電図検査】
両腕、両足と胸部に電極を装着し、心臓から発生する微弱な電気を検出する検査です。不整脈や虚血性心疾患等がわかります。検査時間は5~10分です。
【ホルター心電図検査】
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日常生活をしながら24時間の心電図を記録する検査です。胸部の4~5カ所にシール電極をつけ、記録時間中は小型心電計を携帯していただきます。検査室には2回来ていただきます。
1回目 ホルター心電計の装着
2回目 翌日(24時間後)、ホルター心電計の取り外し
基本的には入浴不可ですが、入浴可能な心電計もあります。御希望の方は検査時に担当の外来看護師、または臨床検査技師にお伝えてください。ただし入浴可能な心電計は台数に制限がございます。あらかじめご了承ください。
【運動負荷心電図検査】
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運動を行い、心臓に負荷をかけ、その時の心電図変化を検出する検査です。主に虚血性心疾患を調べる検査となります。検査時間は準備を含め30~40分程度です。以下の様な運動を行います。
・トレッドミル検査:ベルトコンベアの上を歩く(ウォーキングマシン)
・マスター2段階試験:指定された階段様模型の昇降を行う。
*運動しやすい服装でおいでください。
必要な方は着替えやタオルをご準備下さい。
激しい運動となるので、検査直前の飲食はお控え下さい。
【血圧脈波検査(ABI)】
両腕、両足首にカフを巻き、血圧測定及び、脈波を調べる検査です。閉塞性動脈硬化症等の有無を調べる検査となります。検査時間は準備含め、15~25分程度です。
*ボディースーツや、締め付けの強い服装は検査値に影響がありますのでお控えください。
透析シャントや上腕血管、下腿血管の人工血管、ステント等挿入されている方は事前に申し出て下さい。
【脳波】
頭部に20個前後の電極をつけ、脳から発生する微弱な電気を記録する検査です。てんかん等を調べる検査となります。検査時間は約1時間程度かかります。
*皮脂や整髪料が存在すると、電気信号が拾えない場合があります。
検査前日、もしくは当日に洗髪をし、整髪料を使用せずお越し下さい。
【誘発筋電図検査】
筋肉に電気を与え神経伝導速度を調べる検査です。
主に手根管症候群や肘部管症候群を調べる検査となります。
*手、足を露出しやすい服装でおいでください。
【耳鼻科検査】
耳鼻科領域の検査です。検査の種類は以下になります。
『標準純音聴力検査』
耳の聞こえを調べる検査となります。通常気導検査、骨導検査の2種類の検査を行います。
検査時間は10~15分程度です。
『ティンパノメトリー検査』
鼓膜の動きを見る検査です。耳栓をして検査を行います。
検査時間は約5分程度です。
『耳小骨筋反射検査』
耳小骨に音を加えて反応を見る検査です。
ティンパノメトリーと同時に行われることがほとんどです。
『語音聴力検査』
文字や数字の聞き取りを調べる検査です。
検査時間は30~40分程度です。
『耳管機能検査』
耳管の開閉を調べる検査です。
検査時間は10~15分程度です。
【呼吸機能検査】
肺活量や努力性呼出を調べる検査です。肺気腫や慢性閉塞性肺疾患等を調べる検査となります。また手術前には事前検査として肺活量を調べる場合もあります。服装等の注意事項はありませんが、努力しての呼吸をしていただきますので、やや苦しい検査となります。
【超音波検査】
人の耳に聞こえない程高い周波数の音(超音波)を使い、体内を調べる検査です。ゼリーを付けて、目的部位へプローブという機械を当てて検査します。放射線と違い被曝など人体への影響がないので何回も繰り返し検査が可能です。また妊娠中の方の検査も可能です。
当院で行っている超音波検査一覧
腹部
肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、胃、腸管(小腸、大腸)、膀胱、前立腺を主に調べます。
臓器の大きさや癌や良性腫瘍の有無を検査しています。
検査の時間は約30分前後です。
基本的には検査前の飲食は控えていただいていますが、検査ができないわけではありません。飲食の可否は担当医師とご相談下さい。
心臓
心臓の動きや大きさ、弁膜症、心筋症等を調べます。
検査の時間は30~45分です。
検査前の飲食制限はありません。
検査時、胸を出していただきますので出しやすい服装にてお越し下さい。
また検査者は女性スタッフでの希望があれば、検査科にてご相談下さい。
乳腺
乳腺の状態や腫瘍の有無を検査します。
基本的には女性スタッフで検査をしています。
検査時間は約30分です。
甲状腺
甲状腺の大きさ(バセドウ病や橋本病)や腫瘍の有無を検査しています。
検査の時間は約15~20分です。
血管
頚動脈、上肢、下肢の動脈、静脈を検査します。
動脈であれば動脈硬化の有無や、血液の流れ、詰まり具合の検査をします。
静脈は血栓の有無や静脈瘤の評価をします。
足の血管検査は、ズボンを脱いで下着になっていただきますのでご了承下さい。(簡易的なハーフパンツをお貸ししています。)
検査時間は項目により違いますが、約30~1時間前後です。
その他
唾液腺や表在腫瘤の性状を検査することもあります。
経食道心エコー検査
喉へ麻酔をして胃カメラ様のプローブを飲み込んで、食道から心臓を観察します。
検査は医師が行います。
同意書へのサインが必要となりますのでご了承ください。
不明な点は担当医師、または検査技師へ問い合わせ下さい。
輸血部門
輸血検査の目的は適切な方法を用いて輸血製剤の適合血の選択を行います。輸血に必要な各種検査(血液型検査、不規則抗体スクリーニング、交差適合試験)を行っており、365日24時間、緊急時にも対応しています。主な輸血用血液製剤は赤血球製剤ですが、凍結血漿製剤や血小板製剤輸血にも対応しています。安全な輸血療法が提供出来るよう日々努めています。
新型コロナウイルス感染症関連検査
2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2) がヒトに感染することによって発症する感染症です。
症状は様々で、主に発熱、空咳、疲労感、痰、嗅覚や味覚の消失があり、軽度から重症まで多岐にわたります。多くの場合、無症状または風邪様症状を伴う軽症で自然治癒しますが、重症では急性呼吸窮迫症候群や敗血症、多臓器不全を伴い死に至ることもあります。また感染力の強い変異ウイルスも注目されています。
COVID-19の早期発見として当院では抗原定量検査と核酸検出検査を行っています。
【抗原定量検査】
当院ではSARS-CoV-2の抗原を高感度かつ定量的に測定できる全自動化学発光酵素免疫測定システムを導入しています。鼻咽頭拭い液を採取しSARS-CoV-2特有の蛋白質が存在するか調べる検査です。
一定以上の量があれば陽性となりウイルスが体内に存在している(感染している)ということを意味します。しかし陰性だとしてもPCR検査と同じように全く感染していないことを意味するわけではありません。
検査時間は採取から結果判定まで60分程度です。PCR検査より精度はやや劣ります。
【核酸検出検査(PCR法)】
PCRとはポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase chain reaction)の略でウイルスの遺伝子を特殊な機械で増幅させる技術です。当院はリアルタイム-RT(Reverse Transcription:逆転写)-PCR法の機器を導入しています。鼻咽頭拭い液を採取しSARS-CoV-2の遺伝子が存在するか調べています。これによりSARS-CoV-2の存在を高感度に検出することが可能となります。
検査時間は採取から結果判定まで90分程度です。現在では一番精度が高い検査方法とされています。
この検査が陽性の場合、ウイルスが体内に存在している(感染している)ということを意味します。しかし陰性の場合でも、ウイルスが全く存在しないことを意味するわけではなく、検出できないほどのごくわずかなウイルスがいる可能性は否定できません。
診療スタッフ
鈴木 雅子(臨床検査科部長)専門領域:外科病理・細胞診 |
【検査科構成】
臨床検査科部長の鈴木雅子医師のご指導のもとに臨床検査技師19名、受付業務2名、採血業務3名から構成されています。